② 70代母の足切断までに至る話

今度は足が・・・

透析生活を続けていた母でしたが、今度は足に問題が出てきました。
最初は「ちょっと指先が黒くなってきたなぁ」くらいに思っていたらしく、
傷に自分で薬を塗ったり包帯したりしていたようでした。
そんなことで治るはずもなく、だんだんそれが広がっていって、
医者から「これは壊疽ですね。このままだと命に関わりますので入院してください」と言われたそうです。
その頃、私は結婚して実家を離れていたので、状況を全く知りませんでした。
母が心配かけるのが悪いからと、私に黙っているように父に言っていたらしいのです。

私は仕事や結婚生活で日々追われていて、なかなか実家に顔をみせることもなくなっていました。
たまにでもいいから、行ってあげれてたら、変化に気付いたかもしれないと悔やみました。
私が母の足の状態を知ることになったのは、入院してからしばらくたってからの、病院の看護婦さんからの電話でした。

足がなくなるなんて・・・

なんでも、医者からは「足を切断しないと命が危ない」とはっきり言われていて、
切断の説得をしているけど、本人がなかなか頷かないので、家族の思いを伺いたい、ということでした。

私もまさか、そんなに悪くなっているとは知らず、まして入院してることすら知らなかったのでびっくりです。
電話を切るなりすぐ入院先の病院へ向かいました。
久しぶりに私と会った母は、しばらく会っていなかった私の顔を見て、始め誰かわからない様子でした。
このとき、ほんとに親不孝者だと申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

単刀直入に、「聞いたけど、足切らないと死ぬって言ってたよ、手術しなあかんで」と言いました。
母はパニックになってました。「足を切るなんて、絶対いやや!私の足は私のもんや!このまま死ぬ」
って泣きながら訴えて、私も、そんな辛い思いしてまで生きててほしいのか?
母が思うようにしてあげたほうが幸せなのでは?などとも思いました。
どちらにせよ、その姿を見てどう説得したらいいのかわからず・・・。
父は、母が嫌ならもうそれでいいんじゃないかとか、無
責任なことを言うのみで、頼りになりませんでした。
母は、「なんで私がこんな目に…」って感じで、頭が真っ白になってました。
それからしばらく、何度も母に会いに行ってはなかなか説得できずに、月日は流れてしまいます。
医者には、
「切らないと本当に危ないんです。切らないとすごく痛くて我慢ならないですよ。そのまま苦しまずスッと死ねる訳じゃないです。」と言われていました。
切断しなくても、痛い思いをするんだし、手術して、義足で歩くこともできるかもしれない、
車椅子でも遊びに行けるかもよ、などと何度も説得しました。

母は「それでも、足を失うなんて考えられへん」と何度も拒否していましたが、
最終的に母も「家族にこんな心配かけたくないわ」と渋々ながらも納得してくれました。

手術の日、台に乗せられた母は「もう、まな板の鯉やわ。心配せんでいいよ。」と笑いながら手術室に入っていきました。
手術は無事に終わりましたが、やっぱりショックは大きかったみたいでした。
手術後は、リハビリと、義足で歩行練習が始まりました。


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